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研究者情報

在宅認知症高齢者と介護家族のソーシャルサポート獲得ICT支援プログラムの開発

■科学研究費補助金(※)

課題番号:18K17640
※科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)とは、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自 由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
https://nrid.nii.ac.jp/search/?kw=%E5%AE%89%E6%AD%A6%E7%B6%BE

    

■研究代表者

安武綾(熊本大学大学院生命科学研究部 准教授)     
    

■共同研究者

喜多敏博(熊本大学教授システム学研究センター学習支援情報システム研究部門 教授)
http://tkita.net
https://researchmap.jp/kitatoshihiro/

【研究の概要】

 私たちがこれまで実施してきた『在宅で生活する認知症の人の介護家族への支援モデルの構築』では、

  1. 認知症の人の介護家族のソーシャルサポート尺度の開発
  2. 認知症の人の介護家族のソーシャルサポート尺度得点と介護負担感やQOLとの関連
を検証してきました。
 その結果、在宅で生活する認知症の人を介護する家族が適切なソーシャルサポートを獲得することで家族の介護負担感が低下し、主観的健康感が高くなることが明らかとなっています (A.Yasutake, 2016)。

 World Health Organization(WHO)とAlzheimer’s Disease International(ADI)が2012年に発表した共同声明では、今後世界的にも認知症の人の人数は急増するため、認知症は公衆衛生の 優先的に取り組む課題だと述べられています。
 厚生労働省においても2025年の認知症の人は700万人を超え、65歳以上の5人に1人になると推計されており、認知症になっても安心してくらせるまちづくりのために、共生社会、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。また、発症初期の在宅で生活する認知症の人を支える家族 は、認知症の人の言動が認知症状であるのか否かということや介護が大変であることを周囲から理解してもらえないと感じ、社会的にも孤立し援助を求めにくい状態であり、早期診断・早期対応につながりにくいことが明らかになっています(安武綾, 2011)。
 私たちが行う研究によって、在宅で生活する認知症の人の家族に適したICT支援プログラムを開発できれば、在宅で生活する認知症の人の家族が適切なソーシャルサポートを早期に獲得できると考えています。適切なソーシャルサポートを早期に家族が獲得できると、介護負担感の軽減、抑うつ状態の改善など家族の健康状態の改善にいい影響があると考えています。さらに、認知症の人を支える家族が心身共に健康であることは、認知症の人の行動心理症状(BPSD)にもいい影響があると考えています。
 より多くの認知症の人を支える家族や保健医療福祉職が、私たちが開発したICT支援プログラムを用いることで容易に適切なソーシャルサポート情報を知り、活用することを願っています。そして認知症の人を支える家族が適切なソーシャルサポートを獲得することで、認知症の人の早期診断・早期対応につながり、認知症の人と家族のQOL(Quality of Life)が向上することを願い研究に取り組んでいます。

【研究の目的】

 研究の目的は、在宅で生活する認知症の人の介護家族に対し、ソーシャルサポートを獲得するICT支援プログラムを開発し、プログラムの効果を在宅で生活する認知症の人の介護家族のソー シャルサポート尺度(A.Yasutake, 2016)を用いて評価することです。


-引用文献-
  1. 安武綾, 在宅で生活する認知症高齢者家族のソーシャルサポートの開発,聖路加国際大学大学院博士論論文集, 2016.
  2. 安武綾:認知症患者を介護している家族の体験のメタ統合, 家族看護学研究, 17(1), 2-12, 2011.

【研究結果】

現在の研究結果(途中経過)は以下をご覧ください。

 わたしを支えてくれるソーシャルサポートは?

 家族は、「在宅で生活する認知症の人を介護する家族のソーシャルサポート尺度(※)」によって自己得点を見える化し、充足しているソーシャルサポート、不足しているソーシャルサポートを明確にします。不足しているソーシャルサポートをGoogleMAP上に表示されたサポートから探します。
 ケア提供者は、見える化された家族の「在宅で生活する認知症の人を介護する家族のソーシャルサポート」得点を活用し、ケアの内容と優先順位を決定していきます。また、複数の家族の得点の平均値を出すことで、そのコミュニティの特徴を分析することが可能になります。「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」の優先課題が明確になるということです。本研究については、収集されたdataを用いて個人へのケアやコミュニティへのケア、認知症になっても安心してくらせるまちづくりの施策に活用していきます。

共同研究、調査依頼等ご関心がある方はPartnerページをご覧いただき、Contactページから個別にお問い合わせください。

※「在宅で生活する認知症の人を介護する家族のソーシャルサポート尺度」は未公開(特許申請中)です。今後環境を整えて公開いたします。


認知症の世界的動向

World Health Organization

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/75263/9789241564458_eng.pdf?sequence=1

 World Health Organization(WHO)とAlzheimer’s Disease International(ADI)が2012年に発表した共同声明では、今後世界的にも認知症の 人の人数は急増するため、認知症は公衆衛生の優先的に取り組む課題だと述べられています。